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微熱兆候Ⅰ 母と娘、愛の肉欲

第8章 貴 子 

「ああ……ママ……息ができない……」
しばらくして、晶子は首を反らして呟いた。
「止めましょうか……?」
「嫌……離れちゃイヤ……」
少女は何かに怯えるように自分から強く抱きついた。再び長い舌先がからみ合う。
「う……あぅ……う……う……」
今度は貴子のほうが息が詰まる番だった。
「う……晶子……あう……う、んん……」
ふたりは唇を重ねたまま体をひねり、そのまま上と下とを入れ替えながら畳の上を転がった。互いのスカートが風にはためくように舞、赤いキャミソールと白い制服のブラウスが交じり合うように交錯する。
ふたりは強く抱き合ったそのままで、息を整えるかのように額と額を寄せ合った。
「汗……かいちゃったね……」晶子はしばらくたってそう言った。確かに互いの服はどちらも汗でしっとり湿っている。
「着替えないと、風邪引いちゃうかも……」
「うん……」貴子の言葉に少女は真面目な顔で返事をした。
ふたりの目じりは紅をさしたようにほんのり赤く染まっていた。互いの瞳に映る自分のひどくエロティックなその表情。貴子はそんな自分から少し恥らうように目をそらし、
「わたしの部屋で着替えましょうか……?」と恥らうように呟いた。
静かに頷き、少女はゆっくりと立ち上がった。しかしその足もとはおぼつかなく、後から立ち上がった貴子の体とぶつかりながら、吐息のようなか細く果かない声を上げた。
「大丈夫?……晶子……」
「ごめんね……なんだか足が痺れたみたい……」
「わたしにつかまって……」
「でも、ママだって……」
「支えあって行こう……。ね……」
貴子は少女の手をとった。ふたりはよろめきながらも一歩一歩前に進み、居間の向こうの貴子の寝室へと向かっていった。
こうなることはずっと前から分かっていたような気がした。強く手を握り、腰を優しく抱いてくれる貴子の姿が頼もしかった。これから訪れるだろう官能よりもそんな彼女の心遣いが嬉しかった。そっと横を向いてみた。美しい母の顔がそこにあった。しっかりと前を見つめ、必死に晶子を支えようと努めているその姿。わたしもちゃんと歩かなければ……。少女は崩れ落ちようとする体を懸命に堪えながら、貴子の手をぐっと力を込めて握り返した。
ベッドにたどり着いたふたりは力尽きるように倒れ込んだ。少女の小さな手のひらがねぎらうように貴子の髪を撫でている。閉じた瞳が風のようにふっと開いた。年の差など感じなかった。晶子の前にいるのは母ではなく、誰よりも美しいただのひとりの女だった。
どちらともなく着ていた服を脱ぎはじめた。互いになぜか相手を見ようとはしなかった。布の触れ合う音だけが耳にサラサラと聞こえていた。とうとう最後の一枚を脱ぎ去る晶子。一瞬そのまま佇んだ後、うかがうようにゆっくり振り向くと、そこには見事なプロポーションを惜しげもなく披露する貴子の輝くばかりの裸体があった
「ママ、とても綺麗よ……」
晶子は子供のように母の胸もとに抱き着いた。貴子もいとおしむように小さな体を抱き寄せる。
「晶子だってとってもかわいいよ」
「わたしもママみたいに美しくなれるのかしら……」
「なれるわよ。わたしなんかよりずっと綺麗に……」
貴子は安心させようとそう言ったわけでは決してなかった。滑らかな皮膚の下に躍動する筋肉を潜ませた少女の肢体は、貴子でさえとてもかなわないと思わせるはちきれんばかりの若さがある。淀みなく伸びる手足、色っぽく浮き出る鎖骨、そして、お椀を伏せたかのような丸く形のいい白い乳房。いつの間にこんなに綺麗になったのだろう……。彼女を見つめる貴子の視線。そこには驚きと愛おしさを合せたような熱い羨望の眼差しがある。
「ママ……」
晶子は彼女の背中を抱いたまま、乳房の流れるような曲線に指を這わせた。
「あっ……」
胸を大きく張り出しながら、貴子の身が煌びやかに反っていく。もはや互いの心に必要のない羞恥心はどこにも存在しなかった。あるのは性感を高めるための女の淑やかな恥じらいだけだ。
乳首に少女の唇が近づいていく。蕾のような敏感な粘膜は熱い吐息を感じて機敏にその身を固くした。
晶子は目を閉じ、赤い突起を口に含んだ。ツンとした、小粒のブドウのようなその感触。誰に教えられたわけでもないのに舌先は自然とそんな赤い突起を転がしている。
「ああ……いい……」
貴子は浮遊するかのように体を泳がせ、少女の頭をそっと抱いた。乳首を舐められている間も密着した腹部や絡む脚が、彼女にいまだ感じたことのない新鮮な快感を伝えている。
「晶子……晶子……」
返事を求めるわけでもないそんな切ない呼びかけが、まるでうわ言のように続いていた。人形のように肢体のすべての力を抜き、為されるままに夢の中をさまよう貴子。そんな彼女の表情も、晶子の舌先が徐々に下へ向かうにつれ、徐々に険しいものになっていく。
晶子の目の前には淫液で濡れた黒い柔らかな茂みがあった。息を吸うたびそこから湧き出る甘い臭気。少女の瞳はまるでの媚薬に酔うかのように妖艶に潤んでいる。
(ああ……こんな気持ち……言葉にできない……)
淫らに口を開けたラヴィアなど、他人のはおろか自分のさえ凝視したことなど一度もなかった。ましてやそこは自分がこの世へと生まれ出た場所。懐かしさなど感じるはずもないけど……だけど、なぜか心は無へと向かって回帰する。
「ママ……」
さっきは緊張して色さえよく覚えていないその場所は、熱帯の深い海に住む美しい未知の軟体動物のように鮮やかなピンクに満ちていた。クリトリスから会陰に向かうねっとりとした紡錘系は見るからに柔らかそうで、溢れた汁はそれ自体が溶けているのではないかとさえ思えるほど、粘膜と一体となって潤んでいる。
「だめっ……だめっ……」
怯えるように肩をすぼませる貴子の姿が愛しかった。晶子は迫る粘膜を見つめながら、彼女の太ももをゆっくりと裂いていった。溢れた蜜がこらえきれずにアナルへ向かって落ちていく。眩しいほどの陰核の妖しい光。明かりに吸い寄せられる蝶のように、少女の舌先はそこへ一直線に伸びていく。
「ああっ……!!」
飲み込みきれない激情を吐き出すように貴子は大きな声を上げた。恥ずかしくて夫にさえ許したことのなかった口による性器の愛撫。なのに……今は淫らな肉をもっと激しく啜ってもらいたくてしょうがない。
小猫がミルクを飲むような音がいつ終わるとも知れず続いていた。舐めても啜ってもミルクはなくなるどころかさらにその量を増やしていった。シーツには失禁したかのような大きな丸い跡がつき、晶子の濡れた口もとはアゴまで滴るような液体で汚れている。
「ああ……晶子……か……感じる……う……っ」
貴子の喘ぎは泣声に近かった。指先や爪先など身体の先端部分はぎこちなく痙攣し、呼吸は酸欠を思わすほどに荒かった。腰が前後に激しく揺れていた。その度に少女の舌は淫靡な襞に飲み込まれるように吸い込まれる。
「……ごめんね……晶子……わたし……先にイッちゃいそう……!」
「ママ……イッていいのよ。ママ……ママ……!」
「ああ……晶子……!!」
貴子は横を向いたまま唇をかみ締めた。喉元の筋が吊るように浮き出ていた。しっかりと閉じられた大きな瞳。まるで全身がキラキラと輝いているようだった。
「アア……イクう……う・う……!!」
粘度を増したヴァギナから晶子が口を離した時、貴子の体は凍えるように小刻みに震えていた。晶子は背伸びをするように身体を伸ばし、彼女を優しく抱き寄せた。
「わたし……イッちゃった……みたい……」
ゆっくりと瞳を開いた貴子は少女のようにそう言った。恥じらうようなそんな母の表情がたまらなくかわいかった。
「次は晶子をイカせてあげるね」
「……うん」
晶子も恥じらうような笑顔を見せる。すでに指先が乳首の上へと伸びていた。少女の笑顔が艶やかな女の表情へと変わっていく。半開きの口もとから溢れる吐息。受け身となったその体は完全に貴子へと任せている。