微熱兆候Ⅰ 母と娘、愛の肉欲
第2章 玩 具
娘からの思いがけないプレゼントに貴子は子供のような無邪気な顔で喜んだ。決して高価なものではないが、その腕時計にはお金では買えない溢れる思いが詰まっている。
「ありがとう、晶子」
「それつけて明日からの仕事もがんばってね」
「もったいなくて使えないわ」
「使わないと意味ないじゃない」晶子は笑いながらそう言った。「それをつけてもらえたら、時間を見るたびわたしのこと思い出してもらえるでしょう」
「馬鹿ね、いつも思っているわよ」
「本当?」
「あたりまえじゃない」貴子はいとおしそうに娘を強く抱きしめた。「忘れたことなんて一度もないよ」
貴子はいつもの優しい貴子に戻っていた。2時間前のあの恍惚とした光景など、まるで嘘か幻のようだった。
「晶子、今晩何食べたい? あなたの好きなものを作ってあげるよ」
彼女は少し迷ってから、カレーライスを食べたいと答えた。
「カレーライスね。わかったわ。すごく美味しいの作るからね」自信満万に答える貴子。「街まで買い物に行ってくるけど、あなたも一緒に行く?」
「先に宿題やっちゃいたいからここにいるわ」
「そう。じゃあ、待っててね」
「うん」
「あ、そうそう、安西のおばさんのところに少し寄っていこうかな。時計、見せてあげなきゃ」
「もう、わざわざ見せるようなものでもないでしょう」
「だって見せたいんだもん」
貴子は時計に似合う服をわざわざ選んで着替え出した。よほど浮かれた気分でいるらしい。彼女は玄関を出るまでずっと笑顔を振りまいていた。歩きながらも笑っていなければいいのにと思うぐらい、その笑顔は楽しげだった。
ひとりになった晶子は和室に入り、さっき開けっぱなしになっていた洋服タンスの上の引出しを開けてみた。踏み台に乗らなければあけられない高い引出し。そこには昔、貴子が使っていた安物のブローチやネックレスが並べて収められているはずだ。背伸びして中をそっと覗いて見る。たしかに蝶のブローチやイミテーションの指輪などがそこに整然と並んでいた。しかし、その奥にある意味ありげなダンボールの小さな箱。見てはいけないと思いながらも、今さら無視できるわけがない。
晶子は激しい鼓動に唇を青くしながら、そっとフタに手をかけた。
(やっぱり……)
そこにはさきほど貴子の使っていた赤いバイブがグロテスクな姿をさらしていた。恐る恐る手にもって握ってみる。予想もしていなかった柔らかくて硬い感触。彼女は危うく下に落としそうになりながら、慌ててそれをもとに戻した。
(ふー、危なかった……)
バイブの隣には卵型の丸い小さなバイブがあった。何かの本で見たことのある、たぶん、ピンクローターというやつだろう。これならわたしにも使えそうだ。そう思ったとたん、あそこがジュンと熱くなった。彼女は胸をときめかせながら、ピンクの卵をしっかり握った。
引出しを閉め、踏み台をもとに戻す。
母が帰ってくるまでまだしばらくあるだろう。彼女はとなりの自分の部屋まで走り、急いでドアとカーテンを閉めた。自分でも信じられないぐらい体が熱く火照っていた。スカートをはいたまま、ショーツだけを急いで脱いだ。ベッドの上であお向けになり、スジにそって指を這わしす。ぬるりとした感触と、目の醒めるような鋭い快感。
「くっ……!」
それでけで思わずイキそうになった。粘膜全体が過剰に敏感になっているようだった。
(これを、ママも、ママもあそこ入れてたんだ……)
小さな卵をかざすように見つめながらそう思った。そう思うと淫靡な気持ちはさらに強く濃くなった。彼女はローターをそっと口に含んでみた。微かにしょっぱい味がした。これがママの匂い……。晶子はなぜかとても懐かしい安らいだ気分になりながら、唾液で光るピンクの玉を自分のクリトリスへと導いた。
(はうっ、マ、ママ……!)
体全体が魚のようにビクンと跳ねた。毎朝新聞配達で鍛えている引き締った白い足が、もがくように宙に迷う。
少女の充血した幼い性器は前陰唇のヒダまでぱっくり左右に割れていた。陰核は研いだ米粒のようにみずみずしい光を帯び、それは擦られるごとに徐々に頭を出してくる。彼女はクリトリスにローターを強く押しつけたままリモコンのスイッチを入れた。ピンクの卵は信じられないような激しい振動を引き起こした。感電を思わす強いショック。
(わたしの……クリ・ト・リ・ス……、と、取れちゃう……!!)
苦しみ悶えてやっとローターが離れたときには全身は汗でびっしょり濡れていた。ヴァギナは弛緩したようにだらしなく口を開け、膣口はいかにも物欲しそうに濃いよだれを垂らしている。晶子はうわ言のように何かを呟きながらM字に開いた足の付け根にローターを押し込むように挿入した。小陰唇は卵を口に咥えたままブルブルと戸惑うように震えていた。入るか入らないかの絶妙な頃合は気も遠くなりそうな快感だった。身を少し傾けたとき、それはプチュと音をたてて飲み込まれた。今度は内部を突き動かされるような快感が脊髄を走りぬけた。
(ママったら……ひとりでこんなこと……ずるいわ……)
腰が立たなくなるほどの快感に溺れながら、彼女は上と下から歓喜の涙を流し続けた。そして少女は、貴子が昇り詰めるのと同じ甲高い声を上げ、ついには生まれて初めての煌びやかな絶頂のときを迎えた。