若菜かな…? 1-2

若菜かな…?

第1章 はじまり


次の瞬間には視界がグルグル回転していた。どっちが上か下かもわからぬまま、止まったときには俺たちは抱き合ったまま階段下で伸びていた。
「おい、大丈夫か……?」
不思議と痛みは感じなかった。しかし体は重く、手足は満足に動かない。
「大丈夫か、おい」
そう言ってから、俺は懸命に揺さぶろうとしている相手が俺であることに気がついた。
「う、うう…ん……」
俺のくせに奴は色っぽい声をだしてうめいている。
「あいうえお」
やっぱりこの声は若菜の声だ。この手も……。げっ! 俺はセーラー服を着ているぞ。まさか顔だけ俺のままってことはないよな。俺は訳の分からない状況の中でそんな意味不明な心配をしながら、
「おい、起きろって!」
「達也くん……」
やっと目を覚ました俺?は、やっぱり俺のくせに妙なシナまで作って慌ててやがる。どうやら怪我はないようだ。
「どういうこと、これ?」
「俺だって訳わかんないよ」
「もしかして、頭の中だけ入れ替わった……」
「そういうことみたいだな……」


「えーっ!」


奴は急に顔を歪め、メソメソと泣きはじめた。
「おい、お前は俺なんだから、こんなところで泣かないでくれよ」
最初は心配そうに眺めていた通行人がクスクス笑いながら去っていく。
「なあ、頼むって」
俺のからだがそんなに嫌かよ。俺は腹を立てながら起き上がり、俺は俺の手を強引に引っ張った。くそ、こうして説明してるだけで頭の中がこんがらかるぞ。
「なんて重いんだよ、痩せろよ、畜生!」
精いっぱいに力を入れても奴はピクリとも動かない。女ってこんなに非力なのかよ。そう思った途端、奴は急に立ち上がり、俺はぺたんと尻もちをついてしまった。
「キャッ!」
俺としたことが、「キャッ!」とは何だ。それもハートマークがつきそうな「キャッ!」だぞ。なんだ、なんなんだよ! これは。