美人局長の秘密指令 1-3

美人局長の秘密指令

第1章 調査局③

言われる前に爪先を口に含んだ。ナイロンの口触りは決して好ましいものではなかったが、おのおのの指のもつ独立した柔らかさには、なぜか体を熱くさせるものがあった。
「はぁ……はぁ……」
「上手よ。紀香。これだけできれば次の任務も安心ね」
「ありがとう……ございます……」
紀香の頬は紅潮していた。潤んだ目元は、感じはじめた女独特の何かを訴える愁いに満ち、跪いたままの姿勢は崩れるように揺らいでいる。
「どうしたの、あなた。もしかして感じてるの?」
「…………いいえ」
紀香の答えは曖昧だった。この子にはレズの才能があるかも知れない。そう思った亜由美は急遽この場で予定外の教練実習をすることにした。現在、女の諜報員は紀香しかいない。男を扱う能力に長けた彼女が女も虜にすることができるなら、その任務遂行能力は今より飛躍的に上がるだろう。任務ではやはり男と交わるほうが多数だが、この頃では女を相手にすることも無視できないほどに多いのだ。
「そこでスカートを脱いでごらん」
亜由美は命令するようにそう言った。まるで一流のレースクイーンのような、美しくも過剰なプライドの高さを示す強気な紀香の表情が気弱な少女のように下を向く。
「あの……これは何かのテストでしょうか……」
「当たり前でしょう。次のターゲットはどんな要求をしてくるのかわからないのよ。これぐらいのことが出来ないでどうするのよ。芝居だと割り切ってやればいいのよ。わかった?」
「はい……」
紀香はスカートのホックを外し、ためらうようにタイトな布を脱ぎ去った。
上半身はスーツのままに露出する、長く美しい脚のライン。微かにきらめく肌色のストッキングと、真紅のハイヒールとの対比が眩しいほどに目にしみる。